「絶対音感(ぜったいおんかん)」は、ある音を聴いた時に、他の音と比べなくても「C(ド)である」「A(ラ)である」といった音の高さが判る能力だ。
また、「ド」と「ミ」と「ラ」が同時になったとしても、その3つの音を言い当てることができる。
「他の音と比べなくても」というところが、つまり「絶対」を意味するのであって、一般人にはそんな超能力はそなわっていない。
例えば 音ではなく、長さなら
音の高い低いではなく、長さで表現してみよう。ここに3本の木の棒があります。
(b)は(a)の1.5倍の長さである。
(c)は(a)の2倍の長さである。
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なるほど、これはだいたいわかる。だけどこれって「相対的」だ。
絶対的というのは(a)の長さは10cmだ、とわかることをいう。だから(b)は15cm。
もし(a)も(b)も見なくて、(c)だけを見ても長さは20cmと言い当てる。
もちろん、この木の棒はイラストだから長さを正確に描いているわけじゃないし、あなたが見ているモニターの画面解像度で大きさが変わるので何cmという数字は例えの話だけれど。
見ただけで長さが正確にわかる超能力は、いわば「絶対長感」なわけで、「絶対音感」とは聴いただけで音の周波数がわかる能力ということになる。
「ラ」の音の周波数は440Hz(ヘルツ)と決められた
1939年、ロンドンの国際会議でA(ラ)の音は440Hz(ヘルツ)と決められた。
でもって、英語圏ではA=440Hzを使うことが多いが、
大陸ヨーロッパのオーケストラでは少し高いめにチューニングされるそうだ。
例えばベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は A=444〜445Hz が基準だという。
絶対音感を持つ人は、ほんの 数Hz の違いでもわかるらしいから、ちょっと悲惨なことになる。
イギリスのオーケストラが440Hzでドイツのオーケストラが445Hzだとすると、
絶対音感をもったドイツ人がイギリスのオーケストラを聴くとユルユルでて気持ち悪くて耐えられないぞということになる。
逆に絶対音感をもったイギリス人がドイツのオーケストラを聴くとキャンキャンして頭が痛くなるぞということになってしまうのか。
ほんとうかなあ、こんなことになってしまうのかなあ。
アナログのレコード
今でこそデジタルなので、ターンテーブルの回転数やテープレコーダーのゴムローラーの擦り切れ具合を気にすることはないけど、
音響機器がアナログの時代はどうだったんだろう。レコードプレイヤーの回転数が少し狂うと音高は微妙に変わってしまう。
半音高くなったり半音低くなったりするなら、まだ転調したようになるので絶対音感域に入っているのでいいにしても
安物のプレイヤーなら少しだけ音程が狂っているというは当たり前で、テープレコーダー何かはもっとひどいかもしれない。
こんなアナログ時代に絶対音感を持った人達はどんな生活をしていたのだろう。音楽を聴くたびにトイレに走って行って嘔吐していたのかもしれない。
いやいや、さらには、よく知っている曲ならば、半音違ったとしても絶対音感保持者は転調とは感じず、最初から最後まで調子の狂った音楽に聴こえる。
この曲はハ長調(Cスケール)なのに、嬰ハ長調(C#スケール)で鳴っているではないか。なぜだ。気色悪い!。脱線した列車だ。違う曲だ。
頭の中で音符に書き綴っているオタマジャクシが #記号と戦うことになってストレスがたまって、頭痛がして、便秘になって痔も悪化するという事態になりかねない。
コップをたたくと
コップと叩いたり、スプーンを叩いたりした時に出る音。絶対音感を持つ人はC#だとかE♭だとか即座にことえることができる。
テレビに「絶対音感を持つ女性タレント」とかがトーク番組に出演していて、この実演を余興のようにやっていた。
これは嘘だ。
なぜなら,コップやスプーンは、そんなに正しくチューニングされているはずがない。確かにある一定の周波数の音がチンとか鳴るのだろうけど絶対音としての定められた周波数を発していることはまずないだろうからね。
ましてや、小鳥のさえずりや救急車のサイレンの音までもというから、これはいったいどういうことだろう。
鳥の鳴き声なんて一定ではない。ピィーと鳴いたとしても一定のピッチの声をださない。「ピ」が高くて「ィー」低いとか、すなわちスラーがかかっている。この音名を当てるというのはなんか怪しい。
救急車のサイレンは、走りながらなのでドップラー効果がかかっているので近づく時は高く、遠ざかる時は低くなる。しかも、車の走るスピードによって音高は変わる。この音名がわかるというのはなんか不可解。
いやいや、どんどん変化する音程であっても、ある瞬間の音を捉えることができるということなのだろうか。さあ、わからない。